ミラン・クンデラ『小説の精神』(金井裕/浅野敏夫 訳)

小説の死とは根も葉もない観念ではないのです。それはすでに起こったのです。そしていまや私たちは、どうして小説が死ぬのかを知っています。小説は消滅するのではなく、その歴史の外に転落するのです。そんなわけで、小説の死は、だれにも気づかれずに静かに起こり、そしてだれひとり眉をひそめる人はいないのです。

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