J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

 いちばんよいことは、その日その日の出来事を書き止めておくことだろう。はっきり見極めるために日記をつけること。取るに足りぬことのようでも、微妙な違いを、小さな事実を、見逃さないこと。そして特に分類してみること。どういう風に私が、この机を、通りを、人びとを、刻み煙草入れを見ているかを言うべきだ。なぜなら、変ったのは〈それ〉だからである。この変化の範囲と性質とを、正確に決定しなければならない。