2011-08-31から1日間の記事一覧

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

苦しみは実存しない、なぜならそれは余計なものをなにひとつ持たないから。それ以外のすべてのものこそ、苦しみとの関係によって余計なものなのである。苦しみは〈在る〉。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

あなたはやってきた、しゃべった、帰った、すべて生憎の時に。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

遅すぎた。もうこの言葉には意味がなかった。そこには、握りしめていた、黄ばんだ紙の束以外のものはもはやなにひとつ存在しなかった。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

いま私は知ったのだ。事物はまったくそれがそう見えるものであり、――そしてその〈背後〉には……なにもないということを。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

〈経験〉は、たしかに死に対する砦以上のものだった。それはひとつの権利だった。老人たちの権利なのである。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

私が自分の人生について知っていることは、すべて書物から学んだように思われる。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

私はこう考えた、最も平凡な出来事がひとつの冒険となるには、それを〈語り〉はじめることが必要であり、それだけで充分である、と。これは人が騙されている事実である。人間はつねに物語の語り手であり、自分の物語と他人の物語に囲まれて生活している。彼…

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

なにかは終るためにはじまる。冒険はつぎ足されることがない。冒険はその死によってのみ意味を持つ。冒険の死に向って、それは恐らく自分の死でもあろうが、私は永久に引きずられて行く。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

そうだ、私は冒険というものを経験したことがない。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

私はもう仕事をする興味がない。夜を待つことの外に、もうなにもできない。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

人間には恐らく自分の顔を理解することが不可能なんだろうと思う。それともそれは私が孤独だからだろうか。社会生活を営む人たちは、友人たちに見られているのと同じ顔を、鏡の中に発見することを学んだのだ。私は友人を持っていない。私の肉体がこれほどむ…

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

午後三時。三時というのは、つねになにをしようと思っても遅すぎる、あるいは早すぎる時刻だ。午後の奇妙なひととき。今日は、特に耐え難い。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

人間が自分の理性を籠絡しておいていかに偽ることができるかに、私は感嘆する。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

いちばんよいことは、その日その日の出来事を書き止めておくことだろう。はっきり見極めるために日記をつけること。取るに足りぬことのようでも、微妙な違いを、小さな事実を、見逃さないこと。そして特に分類してみること。どういう風に私が、この机を、通…