トルストイ『人生論』(中村融 訳)

ばかばかしくて恐ろしい死の迷信にこれ以上決して悩まされないようにするには、次のことを知れば充分なのだ。即ち、わたしの生きる根本をなす一切はわたし以前に生き、とうの昔に死んだ人々の生命から成立っていること、従って、生命の法則をまもり、自分の動物的自我を理性に従わせ、愛の力を発揮すれば、人は誰でも己れの肉体的生存が消滅した後も他の人々のうちに生きてきたし、現に生きている、ということこれである。