H.S.クシュナー『なぜ私だけが苦しむのか――現代のヨブ記』(斎藤武 訳)

 人生に傷ついた人にとってもっとも不幸なことは、追い討ちをかけるように自らを傷つけ、傷口を広げてしまう傾向があるということです。人から拒絶されたり、家族を失ったり、けがをしたり、運が悪かったりということだけではすまず、自分は悪い人間だからこんなことになったのだと考え、そのため、手をさしのべて助けようとしてくれる人を遠ざけることになってしまいます。苦痛と迷いのなかにある時、本能的にまちがったことをしてしまうことが、なんと多いことでしょう。自分のような人間はだれからも助けてもらえないと感じ、罪の意識、怒り、嫉妬、自らしょいこんだ孤独などによって、ただでさえ悪い状況をますます悪くしてしまうのです。