マルキ・ド・サド『悪徳の栄え』(澁澤龍彦 訳)

言っても詮ないことでしたが、子供の時分から、趣味や習慣によって悪徳を愛して来た人でなければ、とても堕落した行為の絶えざる実行のうちに、大きな幸福を確実につかむことはむずかしいのです。美徳の退屈な道しか歩んだことのない人は、かかる幸福にけっしてぶつかることがないのです。