林達夫「書籍の周囲」

もとより翻訳において無謬であることが人間に殆ど禁じられていることは、私とてよく知っている。翻訳に対する眼が寛容の眼でなくてならぬことは、私の進んで言いたいことである。しかし誤謬にも程度種類とがないであろうか。

   ※太字は出典では傍点