アンソニー・ストー『孤独――自己への回帰』(森省二、吉野要 監訳)

 「自虐的」という、他者に対する服従的な態度は、その背後に、攻撃性の抑圧を含んでいる。他者に対抗できない人、必要なときでさえ自己主張ができない人は、敵意を抑圧しているのである。そういう人が抑うつ的になると、他者への敵意は自罰という形で置き換えられて、直接自分自身に向けられるようになる。フロイトが彼の古典的な論文「悲哀とメランコリー」で指摘しているように、抑うつ的な人が自分に向けている非難は、たいていは彼の身近な誰かに向けたいと思っている非難である。しかし、彼はその人の愛情に依存しているので、反感をかうことを恐れて、決して非難をあらわにできないのである。