津島佑子『寵児』

三人。高子はその数の安定していることに強く心を魅かれた。二、ではない、四、でもない、三、という数。三角形。充実した、美しい形だ。方形もよいが、ともかく三角形がすべての形あるものの基本となっている。ドミナントだ。ド、ミ、ソ、の和音。聞き慣れてしまっているから、いちいち感動などしたこともないが、この完全和音の充実はどんな音よりも強靭なのだ。二人では、どうしても、家族と呼べる形を作りだすことができない。大人が一人、子どもが一人、では、二点を結ぶ直線しか結べない。しかも、片方は高すぎ、片方は低すぎる。斜めの直線だ。