ジャン=リュック・ナンシー「贈られる眼差し」(安原伸一朗 訳)(『アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集 ポートレイト 内なる静寂』所収)

わたしたちの方を向いているものは,どんなものであれ,わたしたちを眺めている.それは,わたしたちに対して,対象に向けられた目のようにある,ということではない.そうではなく,それがわたしたちのなかに入り込み,わたしたちの心を占め,わたしたちにとって重きをなすということなのだ(中略).それはわたしたちを一つの方向,多種多様な方向のうちの一つの方向へと巻き込む.写真とは,そうした多種多様な方向を同時に輝かせるものである.