夏目漱石「文壇に於ける平等主義の代表者『ウォルト、ホイットマン』Walt Whitmanの詩について」

 然る処天茲(ここ)に一偉人を下し大に合衆聯邦の為に気焔を吐かんとにや此偉人に命じて雄大奔放の詩を作らしめ勢は高原を横行する「バッファロー」の如く声は洪濤(こうとう)を掠(かす)めて遠く大西洋の彼岸に達し説く所の平等主義は「シェレー」「バイロン」をも圧倒せんとしたるは実に近来の一快事と云はざるべからず。
 此詩人名を「ウォルト、ホイットマン」と云ひ百姓の子なり。