千家元麿「母と憩ふ」(全)

もう嫁を貰つてもいゝ位の息子と
老いたる母と一緒に歩いてゐるのを見ると
俺は羨ましい位
母が幸福さうなのを感じる
さうして嫁をもらつても
息子よ、お母さんに深切にしてあげろと頼み
 たくなる
人前の故か、それとももう息子は
母の愛より、外の愛を求めてか
ちつとばかり冷淡に見えるのは
人前を装つてるのであつてくれゝばいゝと思
 ふ