夏目漱石『満韓ところどころ』

 かう云ふ連中だから、大概は級の尻の方に塊(かた)まつて、何時(いつ)でも雑然と陳列されてゐた。余の如きは、入学の当時こそ芳賀矢一の隣に坐つてゐたが、試験のあるたんびに下落して、仕舞には土俵際からあまり遠くない所でやつと踏み応えてゐた。それでも、みんな得意であつた。級の上にゐるものを見て、なんだ点取(てんとり)がと云つて威張つてゐた位(くらゐ)である。さうして、稍(やゝ)ともすると、我々はポテンシヤル、エナージーを養ふんだと云つて、無暗(むやみ)に牛肉を喰つて端艇(ボート)を漕いだ。