ボリス・エイヘンバウム「ゴーゴリの『外套』はいかに作られたか」(小平武 訳) (水野忠夫編『ロシア・フォルマリズム文学論集1』(せりか書房)所収)

何にせよ、あるひとつの判断を作者の魂の心理的な内容と同一視するような、よく見受けられる態度は学問にとって誤った道である。この意味であれこれの気分を味わっている、現実の人間としての芸術家の魂は、常に作品の限界の外にあるし、また外にとどまらなければならない。芸術作品は常に何らかの作られたもの、形成されたもの、案出されたものであり、――巧妙なものであるのみならず、良い意味で人工的なものである。それ故、芸術作品に精神的体験の反映する余地はないしまたありえない

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