ジェラール・ジュネット『フィギュールI』(花輪光 監訳、和泉涼一、小田淳一、神郡悦子、矢橋透 訳)

文学が最大の効果を発揮するのは、ある期待と「どのような期待をも裏切る」驚きとの間の、また大衆によって予見され、望まれる「真実らしさ」と、創造という予測不能さとの間の微妙な戯れによるのである。しかし、この予測不能さ、名作が持つ限りない衝撃といえども、真実らしさの秘められた深部において最大限に反響していないのではないだろうか。ボルヘスはこう述べている。「偉大な詩人とは創り出すよりも見出す者のことである」。