アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン『「知」の欺瞞』(田崎晴明、大野克嗣、堀茂樹 訳)

この本では、二つの異なった意味に解釈できる曖昧なテクストの例を数多く見てきた。このようなテクストは、読み方に応じて、正しいがかなり当たり前の主張か、過激だが明らかに誤った主張かのいずれかになる。そして、多くの場合、このような曖昧さは著者が意図して持ち込んだものだと考えざるをえない。実際、こういう書き方にしておくと学問的な論争の際大いに有利である。過激な解釈の方は、比較的経験の浅い聴衆や読者の気をひくのに役立つ。そして、この解釈がばかげていることが露見したら、すぐに、自分は誤解されたと弁解して無害な方の解釈に撤退することができるのだ。