李頎(りき)「盧五が舊居に題す(ろごがきうきょにだいす;題盧五舊居)」(抄) (齋藤晌)

君を憶うて涙は落つ東流の水。
歳歳 花開くは知んぬ誰が爲ぞ。


きみをおもうてなみだはおつとうりうのみづ。
さいさい はなひらくはしんぬたがためぞ。


憶君涙落東流水
歳歳花開知爲誰


ありし日の君のことを思い出して、涙が川水の上にこぼれ落ちる。東へ流れて行(ゆ)いて返らぬ水。一切は返らないのだ。年々春になれば、ここにも花は咲くだろう。だが、いったい、それは誰に見せるためだろうか。