李白「行路難し 三首(かうろかたし さんしゅ;行路難三首)」(抄) (青木正兒)

行路難し、行路難し
岐路多し、今安にか在る。
長風 浪を破る 會に時有るべし
直ちに雲帆を挂けて滄海を濟らん。


かうろかたし、かうろかたし
きろおほし、いまいづくにかある。
ちゃうふう なみをやぶる まさにときあるべし
ただちにうんぱんをかけてさうかいをわたらん。


行路難 行路難
多岐路 今安在
長風破浪會有時
直挂雲帆濟滄海


行く路は困難だ、行く路は困難だ。岐(わか)れ路が多くて、目ざす方は今何方(どちら)に在るであらうか。〔どの路を行ったらよいか分らない。〕しかし長風に乘じ波を蹴破って船を進める時期は當然來るであらう。其時こそは直ちに雲帆を掛け青海原を渡って目ざす方へと赴けるであらう。