王漁洋「夜雨のとき寒山寺に題し、西樵・禮吉に寄する二首(やうのときかんざんじにだいし、せいせう・れいきつによするにしゅ;夜雨題寒山寺寄西樵禮吉二首)」(抄) (橋本循)

日暮れて東塘正に落潮
孤篷泊する處、雨瀟瀟
疎鐘夜火、寒山
呉楓の第幾橋をかを過ぎしを記す


ひくれてとうたうまさにらくてう
こほうはくするところ、あめせうせう
そしょうやくゎ、かんざんじ
ごふうのだいいくけうをかをすぎしをきす


日暮東塘正落潮
孤篷泊處雨瀟瀟
疎鐘夜火寒山
記過呉楓第幾橋


日は暮れかかり、運河の東の塘(つつみ)あたりは、ちょうど引き潮どき、我が舟の泊(とど)まった折には、春雨淋しく瀟々と降り注いでいた。唐の張継(ちょうけい)が詩で謳(うた)った鐘の音を聞き、漁火を眺めつつ、寒山寺についたのであるが、さて楓橋から幾つかの橋を過ぎたのを覚えている。