王漁洋「胡耑孩の長江に赴くを送る(こじがいのちゃうかうにおもむくをおくる;送胡耑孩赴長江)」(全) (橋本循)

青草湖邊秋水長し
黄陵廟口、暮煙蒼し
布帆安穩、西風の裏
一路山を看て岳陽に到らん


せいさうこへんしうすゐながし
くゎうりょうべうこう、ぼえんあをし
ふはんあんをん、せいふうのうち
いちろやまをみてがくやうにいたらん


青草湖邊秋水長
黄陵廟口暮煙蒼
布帆安穩西風裏
一路看山到岳陽


 君は長江を溯って郷里なる湖南長沙へ帰られるが、そこには北は洞庭に通じ、南は湘水に接する青草湖があって、秋の湖辺に佇めば、どこまでが水やら天やら。また、舜の二妃に絡まる伝説の黄陵廟のあたりには暮煙蒼く棚引いていることであろう。そうした風景の地に向かって、秋風満帆、安穏な水路、諸処の名山を看ながら岳陽に達せられることであろう。