鷲田清一「ハッピーとラッキー」(『死なないでいる理由』所収)

「幸福」と「幸運」、「ハッピー」と「ラッキー」。この二つの外来語は、この国の語感からすれば、あるいは現代人の語感からすれば、意味を異にする。だが、もとをたどれば意味はほとんど重なるらしい。語源を調べてみると、「ハッピー」は、ハプニングという言葉とともに、「運」や「偶然」を意味する中世英語のhap、ないしは古代スカンジナビア語のhappに由来し、「ラッキー」は、「運」や「めぐりあわせ」を意味する中世英語のlucke、ないしはオランダ語のlukに由来するとある。「ハッピー」と「ラッキー」の重なりは、故なきことではなかったのである。