薛濤「春望 四首(しゅんばう ししゅ;春望 四首)」(抄) (辛島驍)

花開くも 同に賞せず、
花落つるも 同に悲まず。
問はんと欲す 相思の處、
花開き花落つるの時。


はなひらくも ともにしゃうせず、
はなおつるも ともにかなしまず。
とはんとほっす さうしのところ、
はなひらきはなおつるのとき。


花開不同賞
花落不同悲
欲問相思處
花開花落時


春です。花が咲けばうれしいものですが、愛するあなたといっしょに、そのうれしさをともにして、賞(め)でることもかなわず、また花が散るのはさびしいものですが、さびしいとて、ごいっしょにさびしがることもできない今のあたし。さて、愛するあなたは、そちらで、花が咲き花が散るのをごらんになって、おひとりで、どんな思いをしていらっしゃるのでしょうか?――(あなたも、さぞかしさびしい思いでいらっしゃることと思われます。しかしまたあるいは、わたくしのことなどお忘れになって、そちらの美しい方と浮かれておいでになるのではあるまいかという不安な気もいたします。いえいえ、あなたは決してそんなお方ではないはず、やっぱりきっとさびしがっておいでになるでしょう。そうだそうだ、それにちがいないと、自分にいい聞かせていますが、しかし、いかがでしょうか?)