コリン・ウィルソン『アウトサイダー』(中村保男 訳)

人間たるものは、男も女もすべて自分のうちに究極の敵を宿しもっており、それに刃向かうことができるのは本人以外にないということは、何ものにもまして冷厳な事実であろう。贖罪の教理が発明されたのも、まさにこの真理を少しでもおそろしくなくするためであった。うちにひそむこの究極の敵を相手にした戦では、外からの援助を乞うことはできぬのだ。古今東西を通じて、あらゆる聖者や宗教家が、この究極の敵を認識することを自分の宗教の基礎としてきた。