ヒルティ『眠られぬ夜のために 第二部』(草間平作・大和邦太郎 訳)

かなりの期間を経たのち、以前に書いた文章を、ことに以前に努力の目標と見なしたものを、もう一度読み返してみると、自分の内的進歩に最もよく気づくことができる。日記はこれと同じ役目をはたすものではない。毎日規則的に、価値の多い思想が心に浮かぶはずもないし、自分が一体進歩したか、また、どれだけ進歩したかをたえず調べるのは、土に蒔いた種子が果して芽生えたかどうか、毎日しらべる子供のやり方と同じである。欠かさず日記をつける人は、いつでもすこし疑わしいところがある。そういう人は神の導きに十分信頼していないか、あるいは、およそそれに従っていないのである。

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