加藤典洋「私利私欲から世界という関係へ」(入澤美時『考える人々――この一〇人の激しさが、思想だ。』)

加藤 あともう一つ、「革命」ということの社会変化の内実でいえば、僕はそれはかなり革命達成に近似的な事態が手近なところにきているという感じをもちます。週休三日ということですね。フランスなどでは、そろそろ週休三日という要求が日程にのぼり始めているようです。
 もちろん世界の先端部分でもこれが実現するとしても、あと一〇年から二〇年くらいはかかるかもしれない。それに南北格差の問題があるから、これはそう簡単ではないはずです。でも、想定としていうと、もし週休三日ということが実現したら、マルクスがいった労働の意味の変化、ということが別のかたちで実現されたといってもいいんじゃないんだろうか。つまり、いまは週休二日ですよね。そこでの二日の本質というのは、五日の労働を賦活するという余暇です。レジャーですね。でも週休三日になると、むしろ四日の労働の方の意味が反転するんだと思う。残りの三日の生活の方が主となる。それを確保するための、そこでの活動と結びついた労働、ということになるでしょう。すると、三日はもう余暇ではなくなる。