吉本隆明『ひきこもれ――ひとりの時間をもつということ』

 のんびりやろうが、普通にやろうが、急いでやろうが、とにかく一〇年という持続性があれば、かならず職業として成立します。面白くても面白くなくても、コツコツやる。必死で頑張らなくったっていいのです。ひきこもっていてもいいし、アルバイトをやりながらでも何でもいいから、気がついた時から、興味のあることに関して「手を動かす」ということをやっておく。何はともあれ、熟練に向けて何かを始めるところにこぎつけてしまえばこっちのものです。
 ひきこもっていることがマイナスにならないような職業というか専門というか、そういう分野というのはきっと見つかるものです。不登校の人も、生涯のどこかの時点で一度は登校することになるのだとぼくは思います。それが学校ではないとしても、何らかの場所にやがて踏み出していく。自分自身の人生に関わっていく日が、かならず来るのです。