新宮一成『夢分析』

振り返って考えてみれば、かつて嬰児として横になって上を見ていた我々人間にとって、言葉はもともと空のものである。それを獲得することは、横になっているだけの存在に別れを告げて、別の存在になるということである。元の存在はそこに取り残され、言葉が言葉の外の世界を暗示するときに、わずかに姿を現わすだけとなる。空飛ぶ夢は、このような根源的な変化の記録なのだ。