ローベルト・ヴァルザー(川村二郎 訳)

     「輪舞」(抄)


・希求や欲望や最終的にはつねに能力と一致する、そして一年として人間は、自分におよそどれほどのことができるか、感じないですませることはない。


・人はみな、どれほど深く、どれほどはげしく、自分自身をいつくしみ愛さなくてはならないことだろう! それが自然の掟というものだ。


・雪のように白い蝶がひらひらと舞っている。それは人の思いなのだ、舞い踊り、疲れ、落下する運命をになった思いなのだ。

     「夢」(抄)

・ただあこがれるもののみを人は所有するのだ、人間とは、自分がまだかつてあったことのない存在なのだ。わたしはひとつの存在というよりはむしろひとつのあこがれだった、わたしはあこがれのうちに生き、ただひとつのあこがれ、ひとつのあこがれにすぎなかった。


・やさしさにみちあふれた女はすべて大きく、男は愛されるときつねに小さい。愛はわたしを大きくする、そして愛され望まれることはわたしを小さくする。