トム・ガン(中川敏 訳)

     「肉を知る」(抄)


ぼくが吃(ども)るのをほっておいてくれ 去ってほしい、
きみに情があるなら よそへ行って泣いてくれ――
ぼくたちが同じ感情を分ち合うことができるとは思わない。
きみの賢しらな抗議は退屈なだけだ
そして今でもぼくは身構える だからもう行ってくれ、
ぼくが知る きみが知る。

     「イエスと母」(抄)


「私は 私自身のもの しかも自分のものではない」

     「イヴァー・ウィンターズに 一九五五年」(抄)


理由のない悲しい旋律で
人間の心は絶望に満たされる。
夕暮を引きとめておく力がいまどこにあるだろう?