ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー「消え失せたひとびと」(抄)(生野幸吉 訳)

不在のものを抜きにして、何ひとつ在りはせぬ。
無常のものを抜きにして、なにひとつ安全なものはない。
忘れ去られた者らを抜きに、なにひとつ確かなものはなか
 ろう


消え失せた者らは正しい。
ぼくらもそんなふうにしてひびき消えるのだ。