2008-02-05から1日間の記事一覧

ジェフリー・ヒル(富士川義之 訳)

「葬送曲」(抄) ・誰のためにわれわれは苦痛の貢物をかき集めるのか―― ほかならぬ儀式王のためではないのか? われわれは黙想 する 悲惨な神秘を。われわれは死に瀕しているのだ、 肥え太った〈慈愛(カリタス)〉を、あの 磨かれた石の顎を満足させるために…

中島敦『李陵』

常々、彼は、人間にはそれぞれその人間にふさわしい事件しか起らないのだという一種の確信のようなものを有(も)っていた。これは長い間史実を扱っている中に自然に養われた考えであった。同じ逆境にしても、慷慨の士には激しい痛烈な苦しみが、軟弱の徒には…