2009-01-01から1日間の記事一覧

森鷗外「團子坂」

男。あなたはいつでも清い交際といふことを言つてゐるでせう。あの清いといふのが、情緒の薄明(うすあかり)で見るから、清いのです。僕はわざ/\強い、caustic(コオスチック)な藥(くすり)なんぞを使つて分析するのではありません。唯(ただ)自ら欺きたくない…

夏目漱石『満韓ところどころ』

朝起きるや否や、もう好からうと思つて、腹の近所へ神経を遣つて、探りを入れて見ると、矢ツ張り変だ。何だか自分の胃が朝から自分を裏切らうと工(たく)んでゐる様な不安がある。さて何処が不安だらうと、局所を押へに掛ると、何処も応じない。たゞ曇つた空…