2011-01-25から1日間の記事一覧

イタロ・カルヴィーノ『木のぼり男爵』(米川良夫 訳)

「ねえ……」 「ねえ……」 彼らはともに知りあった。彼は彼女を知り、みずからを知った。なぜなら、ほんとうのところ、一度として自分のことがわかっていなかったのだから。彼女は彼を知り、彼女自身をも知った。なぜなら、自分のことはいつでもわかっていたと…

イタロ・カルヴィーノ『木のぼり男爵』(米川良夫 訳)

こうして恋が始まった。少年は幸福で、また困惑していた。彼女は幸福で、少しも驚いていなかった。(娘たちにはなにごとも偶然に起こりはしないのだ。)それはコジモがあれほど焦がれていた恋だったが、今、思いもかけずにやってきた。そしてあまりすばらし…