2011-01-31から1日間の記事一覧

カルティエ=ブレッソン「実物に即した想像空間」(岩澤雅利 訳)(『ポケットフォト アンリ・カルティエ=ブレッソン』所収)

私にとってカメラは、スケッチ帳であり、直観と自発性を発揮する道具であり、視覚的に問いかけると同時に決断を下す、瞬間の導き手である。世界を「示す」ためには、ファインダーを通して切り取ったものに自分が当事者として関係していると感じなくてはなら…

柄谷行人「歴史について――武田泰淳」

私の数少ない経験では、葬式には残酷なところがある。私はそれを葬式が形骸化してきたせいだと思っていたが、本当はそうではなかった。死者を悼むとか悲しむとかいった、人類史において比較的近代に属する観念のずっと底に、葬式がもっている本質がかくされ…

吉本隆明「蕪村詩のイデオロギイ」

すぐれた詩人の詩意識は、かならずその詩人の現実意識を象徴せずにはおさまらない、というのは詩のもっているもっとも基本的な宿命的な性格であって、この事実は、社会的事件をえがけば、自己の現実把握のでたらめをごまかせるとでもおもっているオプティミ…