2011-03-22から1日間の記事一覧

ポール・オースター『孤独の発明』(柴田元幸 訳)

なぜなら彼は信じているからだ――もし真実の声があるとするなら、真実などというものが本当にあってその真実が語りうるものだとするなら、それは女の口から出てくるはずだと。

ポール・オースター『孤独の発明』(柴田元幸 訳)

ある意味では、すべてのものは他のすべてのものの注解として読むことができる。

ポール・オースター『孤独の発明』(柴田元幸 訳)

金があるということの意味は、物が買えるという点にとどまるものではない。それは、自分が世界から影響されずに済むということでもあるのだ。いいかえれば、快楽ではなく、防御という意味における富。金のない子供時代を送り、ゆえに世界の気まぐれに翻弄さ…

ポール・オースター『孤独の発明』(柴田元幸 訳)

自分がいまいる場所にいること、父にはそれがどうしてもできなかった。生涯にわたって、父はどこか別の場所にいた。こことそこのあいだのどこかに。ここにいることはけっしてなかった。そこにいることもけっしてなかった。 ※斜体は出典では傍点

ポール・オースター『孤独の発明』(柴田元幸 訳)

にもかかわらず、父はそこにいなかった。もっとも深い、もっとも改変不可能な意味において、父は見えない人間だった。他人にとって見えない人間、おそらくは自分自身にとっても見えない人間だった。父が生きているあいだ、私は父を探しつづけた。そこにいも…