2011-04-27から1日間の記事一覧

大江健三郎『私という小説家の作り方』

この国では、決して大きい仕事をなしとげたとはいえない歴史学者や文学研究家、国家の芸術機関の権力者でもある作家などが、その晩年に、国を憂える言論を始めてベストセラーにすらなることがある。(中略) それらを見て気がつくのは、老齢に達して遺言のよ…

大江健三郎『私という小説家の作り方』

表現することは、端的に新しく経験すること、経験しなおすこと、それも深く経験することだ。

大江健三郎『私という小説家の作り方』

すでに小説はバルザックやドストエフスキーといった偉大な作家によって豊かに書かれているのに、なぜ自分が書くのか? 同じように生真面目に思い悩んでいる若者がいま私に問いかけるとしよう。私は、こう反問して、かれを励まそうとするのではないかと思う。…

大江健三郎『私という小説家の作り方』

しばしば考えることだが、読書には時期がある。本とジャストミートするためには、時を待たねばならないことがしばしばある。しかしそれ以前の、若い時の記憶に引っかかりめいたものをきざむだけの、三振あるいはファウルを打つような読み方にもムダというこ…

大江健三郎『私という小説家の作り方』

しかし、私がルイス・キャロルを愛好することにはならなかった。その理由は、『不思議の国のアリス』という作品に、都会の中流・上流階級のもの、という印象をかぎつけたからであったと思う。この作品に深く影響づけられていることのあきらかな安部公房は医…