2012-02-11から1日間の記事一覧

久米正雄「「私」小説と「心境」小説」

人の生活というものは、全然、酔生夢死であってすらも、それが如実に表現されれば、価値を生ずる。かつて地上に在ったどの人の存在でも、それが如実に再現してある限り、将来の人類の生活のために、役立たずにはいない。芸術を、消閑娯楽の具とするのみに止…

久米正雄「「私」小説と「心境」小説」

心境小説というのは、実はかくいう私が、仮りに命名したところのもので、その深い趣意に就ては、いずれ章を改めて述べるが、ただここに一言でいえば、作者が対象を描写する際に、その対象を如実に浮ばせるよりも、いや、如実に浮ばせてもいいが、それと共に…