2012-12-16から1日間の記事一覧

志賀直哉『暗夜行路』

明け方の風物の変化は非常に早かった。しばらくして、彼が振り返って見た時には山頂の彼方(むこう)からわき上がるように橙色の曙光がのぼって来た。それが見る見る濃くなり、やがてまたあせはじめると、あたりは急に明るくなって来た。萱は平地のものに比べ…

安部公房『安部公房全集』12(自筆年譜)

昭和二十年(一九四五)……八月になって、急に戦争がおわった。ふいに、世界が光につつまれ、あらゆる可能性が一時にやって来たように思った。だが、つづいて、苛酷な無政府状態がやってきた。しかしその無政府状態は、不安と恐怖の反面、ある夢を私にうえつけ…