安部公房『安部公房全集』12(自筆年譜)

昭和二十年(一九四五)……八月になって、急に戦争がおわった。ふいに、世界が光につつまれ、あらゆる可能性が一時にやって来たように思った。だが、つづいて、苛酷な無政府状態がやってきた。しかしその無政府状態は、不安と恐怖の反面、ある夢を私にうえつけたこともまた事実である。父と、父に代表される財産や義務からの解放。階級や、人種差別の崩壊……