2013-03-19から1日間の記事一覧

『菜根譚』

潔は常に汚(お)より出で、明は毎(つね)に晦(かい)より生ず。 清らかなものはいつも汚れたものの中から生まれ、輝くものはいつも暗やみから生まれる。人目をひきすばらしいものほど、その生まれ出る所はえてして暗く汚れているものだということ。

『列子』

天下理(り)に常の是(ぜ)無く、事に常の非無し。 この世の中には、いつでも正しいという道理はなく、いつでも間違っているという事柄もない。時間と空間とを条件とするこの世では、同一のことも、その時、場所によって同一には作用しないから、真理と思われる…

フォークナー『死の床に横たわりて』(佐伯彰一 訳)

「ジュエル」俺はいう。ひょいひょい動く二組のらばの耳のあいだを、トンネルみたいにずっと走ってる道は、まるでリボンみたいに、そして前の車軸が糸巻きみたいに見えて、馬車の下に消えている。「お袋が死にそうだってこと、判ってるのか、ジュエル」 人間…

フォークナー『八月の光』(加島祥造 訳)

世間では、人をうまく騙せるのは常習的な噓つき屋だ、と言う。しかし熟練した常習的な噓つきはただ自分だけしか騙せない場合が多い。むしろ自分は一生ずっと真実しか言わないと思いこんでる人の噓こそ、たちまち信じこまれてしまうものなのだ。