2015-01-25から1日間の記事一覧
水涕(みずばな)や鼻の先だけ暮れ残る
誰か似る鳴けようたへとあやさるる緋房の籠の美しき鳥
私は鏡の中にきちんと蔵はれてゐる、白い敷布(シーツ)の壮烈な玉座に。だが、親方は一向そんな「悲壮」には同情を持合せて呉れない風である。だから、私を昆虫の標本のように、硝子の額縁の中へピンでぐつと刺留ると、もう逃げ出す気遣はないといふ了見でこ…
『破戒』はたしかに我が文壇に於ける近来の新発現である。予は此の作に対して、小説壇が始めて更に新しい廻転期に達したことを感ずるの情に堪えぬ。欧羅巴に於ける近世自然派の問題的作品に伝はつた生命は、此の作に依て始めて我が創作界に対等の発現を得た…