2015-03-24から1日間の記事一覧
ゆるやかに着てひとと逢ふ螢の夜
白らじらと光る氷湖の沖解けて倚るべきものに遠く歩めり
富士の裾野のひと目に見わたせる愛鷹山の頂きは海抜千百八十尺、江戸からざっと三十里だが、この山懐には猿がいた、猪がいた、高さのわりあいに噞岨で見た目より谷間が深かった。これを連れ立って裾野の方へ迫って越前ガ岳、呼子ガ岳、鋸ガ岳、位牌ガ岳、黒…
「竹澤先生と私」 かう云ふ一つの題目が、決定的な気持ちでふつと自分の頭にうかんだのは、実に告別式の当日、先生の遺族と吾々ごく親しい者だけが先生の柩の後に蹤いて、霙のふる中を墓地へ行くあの途中の俥の中でゞあつた。人間はどんな哀しみのさ中にも何…