2015-09-23から1日間の記事一覧

田村隆一「声」

指が垂れはじめる ここに発掘された灰色の音階に 息を殺せ 無声音を用いて語れ……愛は性器と死者との不協和音による黄昏のごとき表象なのだ 雨の日の彼女は美しい その秋の夜明け 彼女は黄金の微笑を招く 不意に俺は背をむける 眼底に落ちる青! ああ死はすで…

レイ・ブラッドベリ『何かが道をやってくる』(大久保康雄 訳)

「そうか。それじゃ、いまからちがう考えかたをするんだね。町じゅうで一番幸福そうで、一番にこやかな微笑の持主が、ときには一番重い罪の荷を背負っている場合もあるのだよ。微笑にもさまざまある――その明暗のちがいを見分けることが大切なんだ。アザラシ…

レイ・ブラッドベリ『何かが道をやってくる』(大久保康雄 訳)

父親はすこしも荷を背負わず、苦痛も感じない。女のように、暗闇の中に寝て、赤ん坊といっしょに起きる男がいるだろうか? 母親のやさしい微笑には、すばらしい秘密があるのだ。ああ、女というやつは、なんというすばらしい、不思議な時計であろう! 女は時…

フィリップ・K・ディック『暗闇のスキャナー』(山形浩生 訳)

生者は、死者に利用されてはならない。でも、死者は――マイクは、かたわらの空虚な形、ブルースのほうをチラリと見た――可能なら、生者のために利用されるべきなんだ。 それが人生の決まりなんだよ。 それに死者だって、感情があればの話だけど、生者に利用さ…

フィリップ・K・ディック『暗闇のスキャナー』(山形浩生 訳)

「知覚はあっても生きていないのを想像してごらん。見て、知ることもできるけど、生きてないの。ただ外を見てるだけ。認識はできるけど、生きてないの。人は死んでもまだやってける。ときどき人の目からのぞいてるものは、子供時代に死んだものかもしれない…

フィリップ・K・ディック『暗闇のスキャナー』(山形浩生 訳)

「この世でいちばん危険な人間は、自分の影を恐れる人間だ」