2015-11-26から1日間の記事一覧

谷川俊太郎『六十二のソネット』「11 沈黙」

沈黙が名づけ しかし心がすべてを迎えてなおも満たぬ時 私は知られぬことを畏れ―― ふとおびえた 失われた声の後にどんな言葉があるだろう かなしみの先にどんな心が 生きることと死ぬことの間にどんな健康が 私は神――と呟きかけてそれをやめた 常に私が喋ら…

クロード・シモン『フランドルへの道』(平岡篤頼 訳)

したがってそれほど恋のことなど問題ではなく、でなければあるいは恋とは――情熱とは――まさしくそうしたもの、そんな声のないなにか、なにひとつ口に出されず――形さえなさない――あの心の躍動、あの嫌悪感、にくしみの衝動なのかも知れず、したがって身ぶりと…