2015-11-29から1日間の記事一覧

谷川俊太郎『六十二のソネット』「41 (空の青さをみつめていると)」

空の青さをみつめていると 私に帰るところがあるような気がする だが雲を通ってきた明るさは もはや空へは帰ってゆかない 陽は絶えず豪華に捨てている 夜になっても私達は拾うのに忙しい 人はすべていやしい生れなので 樹のように豊かに休むことがない 窓が…

クロード・シモン『フランドルへの道』(平岡篤頼 訳)

「……歴史は(というか、お望みなら愚かさ、勇気、誇り、苦しみといってもいいさ)検定ずみの教科書や血統書つきの家族用に、でたらめに押収し、消毒し、おまけに口あたりをよくした残りかすしかあとに残さないってわけで…… ところが実際のことはおまえにどこ…

クロード・シモン『フランドルへの道』(平岡篤頼 訳)

「そら出たな。《歴史》か。きっとそいつが出てくるなとおれもさっきから考えていたんだ。そのことばを待ちかまえてたんだ。こいつがおそかれ早かれいつか顔を出さないってことはめったにないことだからな。ドミニコ会派の神父の説教にかならず《摂理》とい…