2015-12-02から1日間の記事一覧

谷川俊太郎『六十二のソネット』「60 (さながら風が木の葉をそよがすように)」

さながら風が木の葉をそよがすように 世界が私の心を波立たせる 時に悲しみと言い時に喜びと言いながらも 私の心は正しく名づけられない 休みなく動きながら世界はひろがっている 私はいつも世界に追いつけず 夕暮や雨や巻雲の中に 自らの心を探し続ける だ…

クロード・シモン『フランドルへの道』(平岡篤頼 訳)

網の目のように交錯した溝が道の亜麻色の砂の上をはしり斜面のへりがすこしずつくずれそがれてこまかい連続的な地すべりを起こしすべり落ちしばらくは網の目の一本の枝を埋めてしまうがそれからまた雨水に洗われ浸食され押し流されて消えてゆき切れ目のない…