谷川俊太郎『旅』「旅3 Arizona」

地平線へ一筋に道はのびている
何も感じない事は苦しい
ふり返ると
地平線から一筋に道は来ていた


風景は大きいのか小さいのか分らなかった
それは私の眼にうつり
それはそれだけの物であった


世界だったのかそれは
私だったのか
今も無言で


そしてもう私は
私がどうでもいい
無言の中心に到るのに
自分の言葉は邪魔なんだ