谷川俊太郎『旅』「旅2」
乞食(ジプシー)が
車の窓をたたいて喚いた
通ぜぬ言葉とてなかった
オスティア
泥に埋まる泥の壁
涸れた井戸
松毬(まつかさ)
其所は此処
余所ではない此処
乞食の此処私の此処
私は此処
逃れるすべはない
青空にすら
人の手はとうに触れている
乞食(ジプシー)が
車の窓をたたいて喚いた
通ぜぬ言葉とてなかった
オスティア
泥に埋まる泥の壁
涸れた井戸
松毬(まつかさ)
其所は此処
余所ではない此処
乞食の此処私の此処
私は此処
逃れるすべはない
青空にすら
人の手はとうに触れている