谷川俊太郎「殺意」

殺されたのがケネディだったから
北京の子どもたちは拍手した
殺されたのが毛沢東だったら
彼等は拍手しなかったろう


私にも怒りがある
憎しみがある嫉妬がある傲慢がある
私にも殺意がある
予期できぬ殺意が


暗殺とは一人が一人を殺すこと
戦争とは万人が万人を殺すこと
死刑とは万人が一人を殺すこと
未来とは一人が万人を殺すこと