クロード・シモン『フランドルへの道』(平岡篤頼 訳)

「もっとも」と、彼は考えるのだった「もしかしたらもう明日になっているのかもしれず、それどころかおれたちがここを通ってからおれの気がつかないうちに何日も何日もたってしまっているのかもしれない。彼にいたってはなおさらそんなことには気がつくまい。なぜならばひとりの人間が死んでしまってからどれだけたつなどとどうしていうことができよう、なにしろその人間にとっては昨日さっき明日などというものは完全に存在することをやめつまり気にかからなくなっていてつまりうんざりさせなくなっているからで……」